目黒のとんかつ・とんき(C)日々の暮らし研究舎 楽しく笑顔な毎日

目黒のとんきでとんかつを

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たべもの

目黒にとんきあり

 かねてから友人に目黒にあるとんかつ屋のお話を聞いていた。

 そのとんかつ屋の名前は、「とんき」。

 とんき・・・

 のんきなのか?
 とんかつの気でとんきなのか?

 そんなことはどうでもいい。
 しかしそうはいっても「とんき」である。
 その名前からしてもうすでにそそられる。

 そうやってそそられ続けて早数年が経ってしまった。
 なかなかタイミングを逃してたどり着けなかったのだ。
 
 それがここ数か月目黒に行くことが何度かあり、ようやく夢が叶ったというべきか。
 叶うときは、するすると叶うもの。
 「とんき」がそれを証明してくれたのだ。

 友人からは、一階の席が良いということ、また、そこでお客さんの出入りをさばく店員さんの手際が良いという話を聞いていた。

 それを期待して暖簾をくぐる・・・。

 すると・・・

 お店に入った途端に目に入ってくる1階の光景。
 たしかにこれは圧巻であります。
 とんかつを揚げる店員さんが何人もおり、それを囲むようにしてカウンターに席がある。「とんき」に入った瞬間に、友人が1階席の席を薦める意味がよく分かった。

 しかし今回は残念ながら1階の席は叶わず、2階席に回されました。

 とはいうものの、2階の席も昭和レトロ感があり、席と席の間に余裕もあって、これはこれでとても満足できるものであります。また、2階を取り仕切る若いお兄さんの朴訥とした感じもすてきだ。

その前に豚汁

 さすが「とんき」である。

 おそらくもう何年も変わっていないであろうシンプルなメニューだ。
 とんかつについては、ヒレカツかロースかつかの二択。

 豚肉といえば脂身の甘味(旨味)ではあるけれど、年齢的にはもうヒレカツです。

 ということで、ヒレカツのとんかつを頼むことにした。

 うれしいことに、ご飯とキャベツはお替り自由。そして、豚汁は一杯までおかわりができるとのこと。

 そして待つこと10数分くらいだったでしょうか。

 念願のとんきのとんかつが運ばれてきたのであります。

 で、とんかつの写真をお見せしたいと思いながらも、まずは定食に付いてくる豚汁をば。

 この豚汁、いわゆる私たちがイメージするものとはかなり異なります。
 豚汁というと、里芋やニンジンが入っているような具だくさんのものを思い浮かべるのが普通だと思う。しかしこれはそういった類のものではない。この豚汁は、“たまたま味噌汁の具が豚肉だった”というくらいのもの。しかも通常はバラ肉などの切り落としが使われるが、とんきの豚汁の豚肉は、脂身がのったもので、形は四角。いかにも無造作である。

 一見すると豚汁のカテゴリーには入らない。
 味噌汁の延長だ。

 などと思ってすすってみる・・・。

 うむ、なんだこの旨味は・・・。

 と一瞬にしてとんきの豚汁のファンになって仕舞う始末なのであります。

 とんきの豚汁は、豚汁ではない。
 これは、あくまで豚の脂身の旨味を楽しむためにこの形になったものなのだ。
 シンプルに、とんかつ屋が提供できる豚汁とは何だろうと追究していった結果が、このような豚汁にたどり着いたに違いない。

とんきのとんかつとは

 ということで、いよいよとんかつ。
 待ちに待った、とんきのとんかつです。

 やってきたとんかつ、その全体像はこちら。

 このとんかつの特徴は、衣が豚肉に引っ付いていないところ。
 通常のとんかつといえば、衣と豚肉に一体感があるというもの。

 しかし、とんきのとんかつにはそれがない。
 『食べログ』なんかでの評価を見てみても、ここは意見が分かれるところであります。

 ぴったりと衣が離れないような、いわゆるイメージ通りのとんかつの姿が脳内にはびこっていると、このとんきのとんかつは理解しかねるかもしれない。そしてその不理解はそのまま低評価へとつながる。これはとんかつの失敗作であると・・・思われるかもしれない。

 しかしその評価は一概に悪いとは言えない。
 素直なレビューアの感想である。
 正直なところ、私もこれがとんかつ?と一瞬感じたのであります。
 だって、あのとんかつのサクサクとしたパン粉感のある衣ではないのだから。
 もっと正直に言えば、ようやく来れたとんきだけど、失敗したかな?くらいに思ったものです。

 しかし、食べながら気づいたのです。

 これはこれで、これもひとつのとんかつなのだと。
 オリジナリティのある、ひとつのとんかつの形なのだと。

 とんきのとんかつを食べて一番感じるのは、“肉感”です。
 例えば有名なとんかつ屋の名店「まい泉」などは、“箸でも切れる柔らかさ”といったところを強調し、それを売りにしている。
 しかしとんきのとんかつは、肉を食べる料理、つまりは、いかにも肉です、肉質をしっかりと味わおいうという料理であって、まったく別のコンセプトなのだ。

 私はここ最近、柔らかい肉のとんかつに馴れてきていたので、きっとこのとんきのとんかつが異質なものに感じられたのかもしれません。

 でも、これはこれで紛れもないとんかつである。
 パン粉感はないし、よくあるとんかつ感もない。

 とんきのとんかつは、肉料理としてのとんかつなのであります。
 そしてそれは、味噌汁の延長としての、豚肉の脂身の旨味を味わう豚汁の形にもそれが現れている、まさにとんきのコンセプトがどこにおいても盛り込まれているのであります。

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